┃ 活動の背景                       

私が「ペカンの森」を始めたきっかけは、自身の原体験にあります。高校時代、不登校と引きこもりを経験し、近所の植木屋さんとの出会いが社会復帰の契機となりました。しかし、同じように悩んでいた友人を救えなかったという深い後悔と無力感。それが、今の活動の原動力になっています。

研究者として、長年にわたり、環境要因と人の心身の健康との関係を研究してきました。気象、大気汚染物質や宇宙天気、社会の空気感といった多様な「見えない環境」が、うつ病や自殺リスクに影響することを、科学的に明らかにしてきました。こうした研究の中で、私が辿り着いたテーマが「孤独」でした。現在は、孤独な人を早期に発見するためのAI技術の開発も進めています。

そして、早期に孤独を発見した人に対して、「居場所」「役割」「自己実現」を同時に提供する場を創り出そうと考えました。

2021年、京都の山間部にある古民家を購入しました。きっかけは、娘が学校に通えなくなったことでした。子どもが気分転換できる場所をつくりたい——そんなシンプルな願いからです。もともと農業が好きだったことから、長寿命かつ高収益で知られる「ピーカンナッツ(ペカン)」に着目し、1,000年続く「居場所」を支える収益モデルとして、その栽培を始めました。

そして奇跡的に、大学時代の旧友であり、国内でも数少ないペカンの専門家との再会が実現しました。専門家の協力のもと、「ペカンの森」プロジェクトは本格始動しました。

「ペカンの森」は、単なる農園ではありません。健康な人だけではなく、孤独を抱える人々が集い、ボランティアとして農作業やリフォームに関わることで、“誰かの役に立っている”という実感を得て、自尊心を取り戻す場所でもであります。

さらにこの場所は、さまざまな意味をもった「かえる」の可能性を持つ場所でもあります。

– 生き方に行き詰まった人が、「帰る」場所  

– 都会的な暮らしから離れ、本来の自分に「立ち返る」場所  

– ペカンの森をつくることで、荒れた地が自然に「還る」場所  

– ニワトリを育て、「飼える」「孵る」場所  

– 新たな生き方や価値観に出会い、自分を「変える」場所  

– 森で育てた薪や花を手に入れられる、「買える」場所  

このように、「かえる」という言葉には、人生の再出発を象徴する多くの意味が込められています。「ペカンの森」は、そんな「かえる」場所として、すべての人に開かれた存在でありたいと願っています。

また、ペカンの森では、昭和30年代のような暮らし——鶏を飼い、畑を耕し、自然とともに生きる半自給自足的な生活も実践しています。現代の社会に適応しにくいと感じている方にとっても、「こんな生き方があるんだ」と知ることは、生きづらさの緩和につながります。会社や学校といった社会システムに依存しなくても生きていける——そんな選択肢があることを知るだけで、心が少し軽くなる人もいるはずです。

活動に参加いただくボランティアの方に活動の前後にアンケートに協力してもらい、「孤独感」「幸福感」「自尊心」の変化を可視化しています。AIによる孤独感の検出技術と連動させ、社会的インパクトの科学的な証明にも挑戦しています。

参加者のある高校生は、片道3時間かけて通いながら「ここが私の居場所」と話してくれました。その言葉に、私は「もう後悔しなくていい」と涙しました。

「一番救われたのは、実は自分だった。」

「かえる」場所としてのペカンの森は、“後悔”から始まり、“共感”によって育まれ、今や多くの人の“希望”をつなぐ森へと成長しつつあります。孤独をなくすために、人と自然とテクノロジーが手を取り合う——「ペカンの森」は、そんな未来価値創造の最前線です。

┃ 私たちの活動                      

皆さま!このプロジェクトのページをご覧いただき、心より感謝申し上げます。

私たちは、「居場所、役割、自己実現をみんなに」提供するために、ボランティアの仲間と一緒に森の中の空き家をリフォームし、樹齢1000年のピーカンナッツ(ペカン)の森を育てています。自然の中で、新しいつながりを生み出し、誰もが安心して過ごせる「かえる場所」をつくっています。この小さな一歩が、未来を変える大きな力になると信じています。

メンバー紹介

私たちの取組の全体像

私たちは未来のために主に次の5つの取組を進めています。

  • 使われなくなった畑を「ペカンの森」に!

使われなくなった畑の再生だけでなく、収穫したナッツを販売して地域の居場所を持続可能にすることができます。

  • 空き家をリフォームし、みんなが自己実現できる居場所づくり

「学校に行きづらい」「家にこもりがち」という人たちのために、空き家を改装して居場所をつくります。学校以外でも学んだり、人と関わったりできる場所を増やすことで、様々な選択肢の中から自分に合った選択ができるような社会を目指します。

  • 「ものづくり」や「農業体験」ができる学びの場

農業、養鶏、木工などの体験イベントを開催し、実際に手を動かして学ぶ場を提供します。さまざまな世代が交流しながら学び合うことで、新しいつながりを生み出します。

  • AIを活用した「孤独を見つける技術」の開発

「孤独に悩む人」を早期に発見するために、言葉から気持ちを推定するAIを開発しています。AIを活用することで、さみしい気持ちを持つ人を早く見つけ、適切な支援につなげることが可能になります。

  • ボランティアと協力し、活動を全国に広げる

ボランティアの方々と協力して、これらの活動をより多くの地域に広げています。「孤独ゼロ社会」を実現するために、全国展開を目指しています!

┃ 解決したい社会課題                  

私たちは、社会的孤立・孤独の課題に取り組んでいます。

孤独はうつ病などの精神疾患の前段階の状態で、様々な病気のリスク因子といわれています。鬱病や自殺のリスクが2倍になったり、意外かもしれませんが、心疾患、脳卒中や認知症のリスクが3割~5割上がったり、死亡のリスクも3割程度上昇し、それはたばこを毎日15本喫煙するリスクよりも高いといわれています。その影響は、個人の健康にとどまらず、労働生産性の低下や米国では経済損失にもつながっています。日本においては約40%の方が孤独を感じていて、若者から高齢者まで幅広い世代に共通する社会課題となっています。

そのような中で、不登校や引きこもりの増加も深刻な問題となっています。小中学校における不登校の生徒の数は年々増加し、文科省の発表によると34万人を超えています(2024年10月)。また、引きこもりの数は内閣府の調査において146万人と推計されています(2023年3月)。こうした問題は、教育や雇用機会の喪失、社会との関わりの希薄化につながり、社会的・孤独をさらに深刻化させる要因となっています。

加えて、耕作放棄地や空き家の増加、地域コミュニティの衰退も無視できない社会課題です。日本では、農業の担い手が不足し、耕作放棄地が増加しています。これにより、農業生産の低下だけでなく、地域経済の停滞が生じています。同様に、地方を中心に空き家が増加し、防災・治安の観点からも問題視されています。これらの問題は、地域のつながりが希薄化し、住民の孤立・孤独を加速させる要因ともなっています。

私たちは、こうした課題を包括的に解決するために、孤独感を軽減し、社会とのつながりを生み出す仕組みの構築を進めています。耕作放棄地を活用してペカンの森を育てるとともに農作業体験なども実施し、空き家を活用したリフォームの体験、活動の場の提供、地域との関りを生み出す仕組みを生み出しています。「人と人」「人と地域」をつなげて、自己の生きる力を磨いて、様々な選択肢の中から人生を歩めるような社会の実現を目指します。

 これまでの取組                    

2021年に京都府綾部市に空き家と畑を購入してから、ペカンの専門家である友人と2人で畑にペカンを植え始めました。そこから2年くらいは地道にリフォームとペカンの世話を2人で続けていました。

取り組みを進めていく中で、1人、また1人と仲間が集まりました。また、ボランティア団体等と連携することで、取り組みを加速することができました。そして、京都府綾部市と滋賀県大津市の空き家をリフォームしながら、自然に触れ、鶏の世話や農業等の体験ができる場所の整備ができてきました。